うぬぼらけ

備忘録

セブンイレブンを救った名もないヘルパーの話

この前、家の近くでセブンイレブンが装い新たにリニューアルしたらしく、部活の帰りがけに寄ってみた。

 

店内に入る。なるほど、新装オープンということもあって綺麗な店内だ。今まではなかったトイレがついた点も評価できる。

 

流れるように「モンスター キューバリブレ」と「グミ リセットレモン」を手に取り、一瞬の隙も見せずレジへと向かっていく。その余裕さえ感じられる姿はどこからどう見ても常連客そのもの。数多のレジを経験してきた手練のそれに他ならない。

 

「頭が高い。我は常連客。すなわち此処に今まで数えきれぬ程の額を貢いできた者であるぞ。」

 

そんなことを考えていると、順番が空き、僕はレジへと通された訳だが、どうもいつもと雰囲気が違う。

 

レジから漂う異様な殺気。

 

それに気づき、恐る恐る商品から目をあげると、そこには目に覇気を多分に湛えながらもの凄い速度で私の商品を捌く凄腕のレジ店員がいた。

 

 

なるほど、もう一人の手練がココにはいた。

 

買うプロあれば捌くプロあり。

 

思わず感心するほどの美しく無駄の無い完璧に近い手捌きに私は密かにライバルとしての闘志を燃やした。

 

普段、私は接客において、マクドナルドの愛場さん然り、ファミリーマートの大川さん然り、自分のライバルに値する者の名前を覚えるようにしている。

思わず今回も、その圧倒的な覇気に気圧されるが如く名札を確認。名前を見る。

 

そこにはただ一言、「ヘルパー」と書いてあった。

 

 

 当然。

 

 

当然である。

 

 

手練であるのも当然、彼はセブンイレブン本部から派遣された接客のプロ、接客に関する全ての試練を乗り越え、接客の本質を見極めた者。そして、本部から危機に陥った店舗をその名の通りヘルプし、救い出すことが出来ると見込まれた、世界のセブンイレブンでも数少ない、比類なき猛者なのだ。

 

きっと事の顛末はこうだろう。

 

リニューアルオープンした店舗。

しかし常連客はその長い改装期間中に他のファミリーマートやローソンへと離れてしまい、予想に反して客足が伸びない。

経営危機に立たされた店舗。このままではリニューアルオープン直後にも関わらず閉鎖してしまうかもしれない。

そこで、本部から接客の頂点に立つトップ・オブ・ザ・接客、ヘルパーが派遣された。

 

きっと彼はその名を明かさぬまま、あの店舗が危機から救われるその時まで、数多の客を捌いていくに違いない。

 

そして別れ際、経営危機から救ってくれたことを店長から感謝され、名前を聞かれる。

 

彼はこう答える。

 

「よしてください。私は大したことをしていない。名乗るほどの者でもありません、『名も無きヘルパー』です。

おっと、本部から指令だ。残念ですがもう行かねばなりません。私はこれからニューヨークに飛んで、また一つ経営危機の店舗を救わなければならない。その次はナイロビ。その次はダッカ。世界の困っている店舗を救うことこそ私の使命なのです。」

 

私は、世界のセブンイレブンを救うために立ち上がり、私の愛する店舗を救った名も無き彼のことを一生、忘れないだろう。

 

 

知らんけど。